2月某日、とうとう決意した。
「プロジェクター、今週買おう」
友人と計画していたパーソナルカラー及び骨格診断の予約に、申込開始時刻1分で敗れた日の朝だった。
まぁ元々検討はしていたのだ。20年末、
プロジェクター設置のパーティールームに泊まったにも関わらずメーカーを「あぁ~調べてたらよく見るやつね~(ポプちんの顔)」と眺めたきりで型番もそのとき投影されていた画面のサイズも確認せずというていたらくをはたらいた記憶があるので、少なくとも1年以上の寝かせ事案だったことは確実である。
とはいえそこそこの買い物である。機種を調べ口コミを探してお目当てを絞り、実機設置店舗に赴き在庫を確認し、いろいろいろいろと画策はしつつも「
しかし言うて…必需品ではないんだしな…」などと踏ん切りがつかないまま長いこと時が過ぎていたのだが同月、車検で数万円を出し一方で娯楽にお金を出せないという不均衡にその日とうとうぶちっときたというわけだ。緒が切れたようにただただ、日常への「知らん。もう決めた」という静かな怒りだった。経費を出したのだからしばらく節約、ではなくなんで?!必要なことにお金遣ったんだから無駄なことにも同じだけ遣いたくない?!!?!遣わせろや!!!!!となるのが悪しきオタクの性である。
折しも1月末。私は現ジャンルのライブ遠征を敢行していた。
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12月~1月、冬が進行するに併走してなのかただでさえ転職したての仕事が積み重なっていたせいなのか、とかく鬱々としていた。分かりやすく落ち込んでいたというよりは、元気気力に低い天井があってそれ以上はべこべこ頭をぶつけて上がらない感覚。土井先生のツイートに「大切なことや、大好きなことは、ご機嫌なときにやらないと、大切なことが汚れてしまうやん」という趣旨の文があるのだがそんな感じで*1、「好きなものを見ても読んでもテンションが上がらないの、もう私、この人たちへの熱意出せなくなっちゃったのかな…もうどうにもならないのかな…」とひとりさめざめ泣いていた。そんな低空飛行状態なのでもうへらへらと、「遠征の足も全額払戻し対象になったし、配信もしてもらえることになったしもうこれ行かなくてもいいのかな~」と投げ出しそうにさえなっていた。ただ厄介なのはこのテンションはあくまで「低空飛行」であって「地まで(あるいはそれを突き抜けたところまで)落ちた」ものではないので、完全に自棄になって身も世もなく捨て鉢になる程のことがなく、未練は燻らせたままうじうじとした態度を晒していた。友人の考えも千差万別で(行かないことにしたら引きずるんじゃない?とも配信があるなら今回は抑えてもいいんじゃない?ともどちらの話もあった)、当たり前だ、そんなの自分で決めることだ。それでもほぼ前日前々日ぐらいまでうじうじして、結論、フォロワーさんにいただいたメッセージを最後の契機にして、行くことに決めた。当初は友人と合流して銀座のピエールマルコリーニに行ってチョコレートパフェ食べて夜は池袋の中国茶館に行って飲茶食べて一泊してライブへ、という食い倒れ算段だったものを、当日直前に現地入りして誰とも会わず喋らずというかたちに変えた*2。夜も足の都合で途中で抜けなければならなかった。それでも、それでもめちゃくちゃ楽しかった。
初めて生で見た彼ら。
自分たちは声は出せないけどプレートライトとリングライトと鳴子を振って、彼らが歌い踊り笑うのを見る。楽しかった。めちゃくちゃに楽しかった。
頭をぶつけまくっていた低い天井はいつの間にか損壊して無きものになっていた。アクセルを形だけでもとりあえず踏むことで、事実「ご機嫌な生活」を取り戻したのだ。
果たして、まだ世は寒いには寒いが、
かつ仕事は毎日残業だが無事エンタテインメントをエンタテインメントとして摂取する力を一応復活させた私は、件のライブのアーカイブを1週間見倒し、推しカプ概念のガトーショコラを買ったり、そうしてプロジェクターの検討を粛々と進めたりしていたのだ。しかし未だ踏ん切りがついてはいなかった。そこに来ての冒頭の予約合戦敗北。
「買う。今週末買う。車検したんだぞ。カラー診断予約とれなかったんだぞ。いいだろプロジェクター買って」
生命力に満ちた逆ギレである。
その翌週前回のライブの円盤が届く予定だったことも後押しとなって、このタイミングだと断定した。一応それまでに近隣の店舗を回って、目当てにしている機種が取り扱いのないところ、あるけれど取り寄せで1ヶ月以上かかるところと来て、実在庫のある店舗を見繕うところまで来ていたのだ。それを現地で目視確認したのが2月11日、予約failedが17日、円盤到着予定が26日。完全に"ここ"であった。
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……というぐだぐだと長い前振りを経てついに!ついに我が家にプロジェクターがやってきたのである!!! 名前は暫定的にぴーたろうとでもする。かくして迎え入れた結論はといえば、めちゃくちゃめちゃくちゃめちゃくちゃに楽しい。買って1日で元をとったとさえ思っている。「これからの日割りで考えたら1日でも早く買った方が得」という言葉もあるが実に至言だ。
ぴーたろう(仮)は正式名称を
EPSON EB-E01という
*3。公式ではホームプロジェクターではなくビジネスプロジェクターの
くくりに入る。ラインナップの中でもいちばんシンプルなもので、差し当たって使うのはHDMIが1つ。あとはビジネスラインだけに持ち運び前提でか上位機種には付いているレンズカバーがないのだが、ぴーたろうは室内飼いなので問題ない。ヨコ台形補正(投影面に対して機械を斜めに置いても補正できる機能)は環境によってはあった方がいいんだろうけど、正面に設置できてるので現状支障はない。その他もろもろ、実際のところ十分すぎるはたらきをしている。
設置環境は八畳大の洋間。3メートル30離したところから映して反対の壁に約100インチの
画面が出現する*4。100インチ。正確には16:9画面比の場合2214mm×1245mmらしいのだが、壁の周りになにもなさすぎて撮った写真がマイクスタンドとしか比較できない。伝わるのか。マイマイクとスタンドはいいぞ。もっと愉快な部屋にしていきたい。
白い壁様様でスクリーンは買わずに済んだ。実家に戻った場合には白いロールカーテン等で代用する必要があろう。箱を剥いてコンセントと
HDMIで繋ぐのはそれだけなのですぐ終わったのだが、設置する場所や高さ、
画面のズーム調整の試行錯誤で多少時間はかかった。かかったがもうでかい画面が現れただけでめちゃくちゃ楽しいのでテンションは激高だった。完全に新しいおもちゃを手に入れた子どもである。
以下、記録として皆様にぴーたろうとの思い出アルバムをお送りする(2週間分)。
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ところで。プロジェクターとはつまりでかい画面を映し出す機械であり、それは一見平面の話として帰結する。だが実際自室に導入して知ったのは、それが「空間を創出する」代物であったということだった。言われてみれば映画館にしても(あれは音響設備を含むにせよ)同旨なのだから当たり前と言えばそうだったのだろうが。テレビ画面サイズでは生まれ得ない「高低差」もさることながら、それ以上に「視界に入る光量の支配権」とでもいうのか。画面が白く光ればその通り閃光を浴び、暗転すれば真っ暗な闇に放り込まれる。VRにはまた及ばないのだろうが、そこには空間的な体感があった。何度も何度も見てきたはずの映像に初めて出逢う瞬間がある。面白いです*5。
別にその手段が必ずしもプロジェクター購入でなくてもいいしそもそも今回のサイクルの端緒はライブ遠征敢行なのでまた話が別なんだけど、とりあえず、ご機嫌な生活を失くしかけてると思ったら、精神はどうあれ形だけでもアクセルふかしてみてもいいんだと思います。次に続くよ。人類がみなハッピーに生きられますように
*6。