一度や二度の悲しみじゃなくて

だいたい野澤と真田の話をしています

ACTORS, Fire, and Heroic Things――10神ACTORメンバーカラー不依拠論

 

福岡発10人組エンタテインメント集団である10神ACTORには「メバーカラー」がない。
 
 
ワンマン前で声が高まったのもあるのだろうが、ここ1ヶ月程度の中であっても、メンバーカラーに言及するファンの姿(〜がないこと、知りたいと言うこと、なぜ決まっていないのかという疑問を抱くこと)を幾度となく見かけ、それに対し本人たちが直接に、自分たちはそれを特に定めないという旨を交わす機会を二度得ることとなった*1
伴ってということかあるいは他の何らかの意図か都合が先か、基本的に彼らの衣装はほぼ「揃い」である。私服かそれを模したような機会でもない限りおおよそそれは徹底されている。ちなみに言うと色など言う前に型違いのものもないと思うよ!!!あっひたむきチェイサーのスーツ。
 
 

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こういうのとか
 
 

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フィーリングを感じているのが私の推しです
 
 

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奥に燦然とかけられた白シャツ
 
 

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色が分けられたのは運動会かいす-1くらいなのでは…
ものすごい勢いで炭酸を飲んで「自主練かなんかしたんですか?」と言われたのが私の推しです
 
 

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これは揃いません 真ん中のバニーちゃんが私の推しです
 
 

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ひたむきチェイサー(notインテリヤクザ)
 
 

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○○○分の1
 
 

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お気付きでしょうが揃いのTシャツは軽率に作る
 

 

Kiss Me Fire(初回限定盤)(DVD付)

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ちなみに去年結成された九州発のアイドル・九星隊にはメンバーラーがあり、赤の山口くんが「隊長」である
 
 
基本的にメンバーカラーというものが人に対してセットで敷かれていた界隈から来た私にとってはそれが非常に新鮮であり*2、彼らの特異点であると思い、またそれが好きだと、今無性に思っているのだ
 
 
 
 
私がジャニーズ事務所で自担として掲げる真田佑馬は白(Mis Snow Man)→赤(noon boyz)→赤(Love-tune)と、所属ユニットにより色の変遷はあるもののおそらくは比較的自他共に色のイメージが一定しており、私の嗜好を振り返っても、「赤に紐付きがちな人物(あるいはキャラクター造型)」を好きになることはわりと典型的であった*3
そう、メンバーカラー、人と色が紐付くジャンルというのはおおよそ、「アイドル」あるいは「特撮」が挙げられるだろう。
まさにというところで二者を引き合いに書かれた記事、及び特撮について述べた記事があったので、以下肝要と思われる部分を適宜引用していく。
 
①戦隊モノ、アイドル…、グループにおける色と役割の関係 : NIKKEI STYLE (2011年) https://style.nikkei.com/article/DGXNASFK3000U_Q1A131C1000000?channel=DF280120166614
②戦隊ものの色と役割 https://www.tokusatsu.jp/super/iro.html
 
 
初めに特撮である。『秘密戦隊ゴレンジャー』がその色分けの祖であると示すところは①も②も同じであり一般的にもその認識はあるのではないかと思うが、②でこのような記述がなされているのは面白い。 
当時のカラーテレビ普及率が九〇パーセントを超えていた事も背景として寄与しており、「賑やかな画面作りをしないと視聴者が離れてしまう」というテレビ番組制作者としての発想からきたものでした。 
もちろんそれまでにも色に対するイメージや人それぞれに似合う色などを考えることはあっただろう。①では「色の持つ一般的なイメージ」が表にまとめられており、「青:理性的」「黄:明朗快活」などの例が挙げられている。だが、制作上の意図から彩り豊かであることを前提とした上で、明確にそれを「個人と紐付ける」(それは結果として重層的に継承されていくこととなる)というのはある種発明であったのかもしれない*4。②では「人」というものを踏み込んで「役割」「機能」と表現しており、宛がわれた色に基づいて「その色が意味するキャラクターバリエーションを内包する」と述べている。
 
 
 
比してジャニーズについては①にて、色分けの別の理由が挙げられている。「目印」だ。
 
例えばジャニーズ所属のグループは、各メンバーのイメージカラーが存在する。厳密にいえばその多くは事務所がアナウンスしておらず、固定の公式カラーでなかったりするが、演出上身につけた色が、そのままファンの間で“公式化”しているケースが少なくない。*5
(中略)
ただしジャニーズにおける色分けは、スーパー戦隊モノとは目的がやや異なる。彼らの場合、厳密なキャラ分けというより、目印的な意味合いが強い。コンサート会場が巨大な彼らは、観客に見分けてもらう手段の1つとして衣装の色を活用しているのだ。
 
また女子ドルの例も出し、
 
例えば全国のショッピングモールなどで行なわれるイベントの際、一般のお客さんはメンバーの名前を当然知らない。誰かと歩いていて偶然ステージを見ても、「あの髪の長い子かわいいよね?」「え、どっち?」「じゃいいや」と、共通の話題として成立しにくい。しかし「あのピンク」と色で呼べれば、会話も弾むというわけだ。
 
と述べている。*6
 
 
 
 
翻って、10神ACTORならばどうなのか。
確かに、上記のような(生であれテレビであれ)"すれ違いざまの出会い"に面した「色の区別」の働きは有用であるとは私も思う。咄嗟のときにきっかけになりやすい。
一方で、至極単純な話、「10人分の色分け」というのは実際問題そこそこ大変ではないだろうか。特に、彼らもライブや劇中のショータイムのときにはペンライトを扱う。単に紙の上や衣装で色分けをするだけでなく、発光した色が見分けやすいことまでを考えて割り振るのは相当微妙だと思うのだ。
 

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FBSにてリニューアル前の冠『神伝説を残す男たち』時の番組ビジュアル。緑難しい。
 
九州を拠点に活動するイケメングループ・10神ACTOR。ワンマンライブの舞台裏とこれからの想いを語る!|ウォーカープラス
先日のワンマン冒頭衣装で初めてこんなに色分けされているのを見た(写真A(2枚目))。色難しいよ!!!!!
 
 
もしくは「目印」という言葉も厄介である。引用では会場の広さをもって目印が必要だと説かれているが、彼らの現場はそこまで視認性が低いとは言えないのが現状だ。無論ジャニーズに比べて、そしてあくまで現状の話だと断っておくが。
また先程ペンライトのことを持ち出したように、「目印」は演者を見つけるためのものだけではなくファンが発信するものも指す。要は、「誰々のファンがここに/これだけいます」ということの表明のために使われうるのだ。それがどう転ぶか、その別を彼らが見たいと望むかは、果たして分からない*7
 
 
無論色の別が悪い方へばかり向くものだと思ってはいない。 
2013/8/18
人というシニフィエに対してその場の、もっと言えばこの国中の全ての人が同じ「色」というシニフィアンを共有して、その色に人を思うことができる。すのーまん及びぬーんぼーいず、乃至みすすのーまんに固定化されたメンバーカラーがあるって、ものすごい幸せなことだよ。色の演出が見たいなぁ。
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メンバーカラーって幸せだなぁーっていう感想。単純にどこが誰か分かりやすいって話と、色と人っていう本来恣意的でしかない相対関係が、もはや刷り込まれた記号と意味の合わせのように離れないでいることの今更の感慨と、そのことによって、この5人で嵐なんだっていうのが共有される感じ。
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2014/3/13
Waiting for you」メンバーカラー演出がとても好きだった。メンバーカラーとは、今誰が歌っているかだとかいう目印の意味だけではなくて、単にあるだけの「色」と「人」という恣意的な関係のものが多くの人々の中に共通言語として確立されているのだという幸せを掲げていると思う。  
これは以前、嵐Popcornツアーでメンバーカラーが使われた「Waiting for you」という曲の演出に起因して呟いたものである。あるいは以前の記事でも引用したことのある言葉に 
日常の、単なる伝達の言葉を失ったとき、表現の言葉、詩が生まれ出てきます。そして言葉のほんとうの姿、そのほんとうの価値は、こちらにあるのです。なぜなら、言葉は、電話器にくっついている電話番号ではないからです。現実の世界をどう区切り、どのようにとらえるか、という人間の問いかけが、言葉の中にはふくまれているからです。 
というものがあるのだが*8、これに対し「(自分の意思で切り取ったり連ねたりしたものではないにせよ)ただの数字の羅列であっても、例えばそれが特別な人のものであればそれはもはや何かの意味を持ちうるのではないだろうか?」などと考えることもあるのだ。
 
ひらたく言えば、メンバーカラーはある人を想起させる一端になり、幸せな気持ちを、高鳴りを増幅するものにもなる。普段身の回りにありふれていると思った色が、ただ物にくっついている、以上のものにもなるということだ。
あるいは先程は含むような物言いをしたがなんだかんだ言ってもやはり単純に、暗闇がその人を思う光でいっぱいになる景色というのはすごく綺麗だと思う。
 
 
 
 
そこまでを踏まえた上で、私は、10神ACTORにはこのままメバーカラーは存在しないままでいてくれていいと思っている。特撮由来の方面に戻ってしまうようだが結局は、やはり今安易に「色を分ける」というのは、そのメンバーをある一面で固定してしまうように思えるからだ。
②に、目を開くような記述がある。
 
『ゴレンジャー』以降レッドはチームの「リーダー」ですので、頼れる年長者として描かれることが多かったのですが、若さをテーマとした『超獣戦隊ライブマン』のころから、仲間と同じく悩みながら行動していく等身大の人物像へと描写が変化していきました。(中略)「レッド = リーダー」という固定観念を外した上でドラマの中心に据えることによって印象を強める手法がしばしば用いられるようになりました
 
 
ドラマの中心、という言葉がひどく腑に落ちた。1月の舞台本公演『ピボットターンで振り向いて』のラスト、主人公である修斗(坂田)が言う台詞がある。
 
 
これは俺の物語だと思っていたけど、本当はここにいる全員の物語だったんだ。だから、もう高望みはしません。あなたにただ愛をまっすぐ伝えたい。あなたが好きです。俺と、付き合ってください!
 
 
「俺、バスケがしたいです! あと、恋もしたいです!」という舞台のコピーを前提とし、好きな女の子*9の前ですごい技を決めて、自分の力でチームを勝利に導いて、そうしてかっこいい姿で告白する、という夢を描いていた修斗まさに試合に破れたあと、かっこ悪くてもそれでも彼女に思いを伝えたいと湧き出るこの言葉はどこかで、このグループに繋がっている。
もしも定型的に言われる"漫画のような"物語の中で自分がそこに立つ唯一の主人公であれば、まるでチートのように何もかもがうまくいくのだろう、でもそうじゃない。
右往左往も失敗もして、いろんな顔を見せて、登場人物それぞれの糸が引っ張り合い撚り合い繋がっている、それは多面的な全員の物語だ。
 
 
メンバー紹介曲として岡が『10神10色』に描いたラップ詞も象徴的だ。
 

 

自由に彩る 様々なColor 君が選ぶ 何色のHERO 

 

自由に彩る 十人十色 まだ道半ば この10人と居よう 
 
 
 
全員で、揃いで、十人とも色は自在のままで高望みしていこうぜ。
 
 
 
 
まぁ最新のペンラ24色だしね!!!

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おしまい。
 
 
 

*1:文字に残る媒体が少ないので記憶が曖昧なのだが、1つめは3/9か3/16のラジオ『10神ラ族』マークゲスト回、2つめはワンマン直後のFC限定生配信にてだったかと思う

*2:あるいは二次元であればまた色は、キャラデザの多大な要素である

*3:ちなみにシンメであった野澤祐樹は、Mis Snow Man時代は黒、noon boyz時代は青。重ねて言えば、割り振るなら金と銀という立ち並びだった

*4:例えば冠位十二階は個人というよりは立場を示すための色分けだろうし、赤が危険を示したり白が清潔さを示したりというのは感覚的に通じることだと思うので、それを超えて集団の中で色を割り振ったという話。発明、と言い切れるほどには先行研究にも学問にも明るくなく、はぁ?もっと前からこういう事例ありましたけど?など言われると分からないので、深く突っ込まずにいていただけると幸いである…

*5:思うにアナウンスというか名乗ることはない、という感じで、それこそ当たり前のように、自分に紐付くように身に纏っている、と言うのが正しいのかもしれない

*6:かわいいよねと思ったならもっと執拗に言及しろや!!!などと思ってしまったのがどうにもオタクなので、本当にもう、そうでない種の人間のための一措置なのかもしれない…

*7:ファンサをもらうための目印にする人もいるだろうし、あるいはファン対ファンに出てくることもあるかもしれない、こう、同担拒否が強い人が…威嚇に使うとか…目につけるための目印にする…とか…(動物か?) 

*8:安藤信広『漢詩入門 はじめのはじめ』1989年、東京美術

*9:私の推しがやりました